先日、「本番がこわいです。ふだん弾けているところも、あがってミスしてしまいます。どうすれば良いでしょうか?」と相談を受けました。
本番の緊張。
誰もが経験し、また長年悩むことですよね。
本番でこわくなってミス連発…わたしも過去に何度もありました。
それも、音楽的な流れの中でちょっとミスしてしまった、等ではなく、ミスが全面に出てしまった演奏もありました。
振り返ってみると、そういう事態になるにはいくつかの原因があります。
この記事では、緊張やこわさはなぜ出てくるのか?という原因に対し、7つの解決策をあげていきます。
つぎの7つです!(※1〜3は【行動編】、4〜7は【思考編】)
- まず練習で改善
- イメージトレーニング
- 通し練習や動画配信など、さらなる経験を積む
- 不完全で大丈夫、と自分に伝える
- 自分の長所を確認
- 思考をコントロール
- おまじない的な合図を決めてみる
一晩ですべて解決するような問題ではありません。
もしかしたら一生つきまとう悩みかもしれません。
それでも、意識的に思考や行動を変えることで、かならず何かは変わるはずです!
いろいろな観点から考えていきますので、ぜひ最後までお読みください。
◎コンクールがこわい人へ~→コンクールになるとこわい・緊張するという人へ。審査員の目線
◎本番で走るのがこわい、不安!という人は→ピアノの本番であせる、速くなる!失敗しないための練習方法、本番のむかえ方は?
◎緊張とかの次元じゃなくて、間に合ってないんですけど…という人は→曲が仕上がらない!間に合わない!と焦ったら?〜本番・コンクールの直前に〜
もくじ
緊張の正体や原因を考えてみる
まず何ごともそうですが、「なぜ、そうなるんだろう?」と一度考えてみてください。
- 技術面、準備の問題
- 経験不足
- 心理的な問題
- 自信が持てない
- 音楽以外のことが優先になっている
- 他人の評価が気になる
ここから先は、いくつかの対策をご紹介します。
あなたの状況に合いそうな方法があれば、取り入れてみてください。
【行動編】具体的に対策していく
まずは、課題や原因が比較的はっきりしている場合。
具体的に行動を起こして、対策していきましょう。
【対策1】まず練習で改善できることは?技術的な問題
「本番になると硬くなる」
「本番になるとミスしてしまう」
というのは、精神的な原因や準備の問題と思われがちですが、必ずしもそうとも限りません。
- ふだんの弾き方
- 体の使い方・導き方
- 弾きにくい、ミスしやすい部分への取り組み方
- 聴き方やテンポのとり方
- 暗譜や楽譜の理解
など、ふだんの演奏や練習をもう一度丁寧に見直すことで改善することも多いです。
まずは、それからやってみましょう!
ふだんの練習については、こちらからご覧ください。
まとめ記事はこちら↓
【ピアノ練習の山登り!】1曲をどんなふうに練習して仕上げていくの?選曲から本番までの長〜い道のり具体的な練習ポイントはnoteで紹介しています↓
もも
さいりえ
【対策2】イメージトレーニング
イメージトレーニングは確実に効果があります。
ただ大切なことは、
- 本番の舞台の上だけでなく、その前や後のことまでイメトレする
- 出来る限りリアルに想像して、その感覚や感情を味わう
ということ。
「本当に本番のような気持ち・感覚になってしまう…」という段階までイメトレできれば、ずいぶん意味があります。
【対策3】通し練習や動画配信など、さらなる経験を積んでいこう
人間、未知のものはこわいんです。
とくに、なんでも「初め」はこわいですよね。
だったら、「経験したことがあるもの」「知っているもの」にしてしまいましょう!
上でご紹介したイメージトレーニングはもちろん、試演会などで経験を積むのもひとつです。
本気になって通し練習するのも、確実に効果があります。
また最近ですと、動画撮影や動画投稿するのも一つですね!
わたしはYouTubeで練習や演奏を投稿していますが、これもめちゃくちゃ緊張するんですよね…客観的に自分の演奏を見つめることもできます。
本番の数日前に丸一日かけて録画した日もありましたが、それだけやれば、少しは慣れます。
おかげで、本番の当日はいつもより落ち着いて、視野を広くもって弾くことができました。
さいりえ
【思考編】考え方や思考から、意識的に変えていこう
もも
さいりえ
マジメにちゃんと練習してる、イメトレもしてるけど、どうしても…という人は、思考が固まっていたり、一つのことにとらわれたりしている可能性もあります。
というか、きっと誰もが
「失敗したくない」
「せっかく弾くなら、よく思われたい」
と思ったことがあるのではないでしょうか?
さいりえ
でも、この思考ってすごく音楽への邪魔をするんですよね…。
ここからは、ピアノの練習そのものではなく、考え方やとらえ方を意識的に切り替えていく方法です。
主役は音楽
はじめに、これをハッキリさせておきましょう。
主役は、音楽です。音です。
これは人によってとらえ方が異なると思いますが、わたしはやっぱり「音楽」を第一におきたいと思います。
自分は、その音楽をふさわしい姿にして、音として具現化させる役割だと考えています。
本来、「自分を良く見せよう」というのが一番に来るわけではないんですよね。
とは言え、0か100というわけにもいきません。
人間が弾くんだから「自己」も絶対入ってきますし、それが悪いわけではないです。
人間が弾いているのに「自己」がまったく出てこない音楽(そんなの存在しないですが)というのも不自然ですし、魅力がないのではないでしょうか?
だから、演奏する上であなた自身を否定する、隠す必要はありません。
…ですが、根底にあるのは「音楽」!という認識で、この先をお読みいただければと思います。
それではいってみましょう!
【対策4】不完全で大丈夫!と自分に伝えよう
アドラー心理学では、「不完全である勇気」ということばがあります。
あなたは不完全なままで良い、そこからどう踏み出すかということです。
完全になるのを待ってから舞台に出るのではなく、不完全であることに勇気をもって、舞台に立ってください。
…いや、わかります!
完璧に弾きたいですよね。すごくわかります。
これって、
- 自分自身への完全主義
- 人にどう見られるか気になる
- 失敗したら恥ずかしい…
とかだけじゃなくて、
音楽、曲への憧れやリスペクトがあって、だからこそこの曲を完全に弾きたい…!
という気持ちもきっとありますよね。
これって、音楽を愛していたり、曲を好きだったりすればするほど、そう思うのではないでしょうか?
さいりえ
でも、演奏ってたった一つの答えを出すものじゃないですよね。
それに、素晴らしい曲は一生かけて何度も、何年も弾き続けるでしょう。
ずっとずっと、演奏者の人生もかけて変化して、成長して、深みを増していく。
そう思えば、いま、完全になってから弾くなんて、できるんでしょうか?
(そもそも「完全に弾こう」と思って出した音って…あまり良い音にならないんですよね)
自分自身に対しても、曲(演奏)に対しても、不完全である勇気を持ちたいなと思います(もちろん最大限、練習や対策した上での話です)。
本番を前に、完璧じゃなきゃいけない、という思いが強くて辛くなるひとは、「不完全で舞台に上がっていいんだよ」って自分に何度も言ってみてくださいね。
さいりえ
【対策5】自分の長所を確認
今回相談されたときに、「あなたの演奏の良いところってどんなことだと思う?」と聞いてみました。
すると、「う〜ん、なんだろ…?あ、よく音がきれいって言われます」と。
それって、めちゃくちゃ素晴らしいことですよね!
でも「こわい、ミスしたらどうしよう」と守りに入っているときは、きっと自分の長所が見えてないと思います。
そこで、
- 自分の音楽の長所
- 褒めてもらったこと
- 好きなところ
などを再確認しましょう。
メモしてみるのも良いです。
メモするときは、長所をズラッと書いてもいいですし、「わたしなんて…」と自信が持てないときは、短所を書いてからそれを補える長所を見つけてみましょう。
- 音が弱い→繊細な表現ができる
- 雑→勢いはある?
- ミスが多い→でも、音は誰よりもきれい
もちろん、短所を克服したほうが良いことはあります。
でも、まずはプラスの部分を先に見つけましょう。
短所ばかり見つけて、それを直すだけの練習やレッスン…って辛くないですか?
本番の演奏も、弾く人自身が良いイメージを持っていないと、聴く人にはもっと伝わりません。
わたしは人の演奏の「良いところ」を見つけるのがけっこう得意です。
ピアノが好きじゃなくて、叩きつけているような演奏は別ですが、ちゃんと自分なりに考えて、音楽への思いをもって弾いている演奏は素敵です。
たとえまだ不完全でも、良いところは絶対にあります。
まずはあなた自身が、それを自覚して認めてあげましょう。
(参考)note の記事です。完成されて評価される演奏だけがすべてではない、という話。
【対策6】思考を意識的にコントロール
- 本番中、別のことを考えてしまう
- 「ミスしたらどうしよう」と思ってしまう
- 演奏に集中できない
これって、よくありますよね…わたしも、あります。
「つい余計なことを考えてしまう」という人への対策としては、次の方法があります。
それは、プラスの思考&具体的な思考で上書きすることです。
- イメージする歌や音楽
- 「こんなふうに弾きたい!」という意思
を、できるだけ具体的に頭に浮かべる練習をします。
たとえば、ある16分音符のパッセージの前でいつも「ミスがこわくて構えてしまう」という場合。
それを上書きする思考を準備します。
- こんなふうに弾こう
- こんなふうに体を使って導こう
- 左手を聴こう、内声を聴こう、◯小節で歌おう…など
- イメージどおりの音が出た感覚
- 前後の音楽のつながり、橋渡し
などを具体的に頭の中で組み立て、本番も意識的にそちらの思考に切り替えます。
ここまでしなくても、自然と音楽に集中できる人や感覚的に弾ける人は、この方法にこだわることはありません。
さいりえ
【対策7】おまじない的な合図を決めてみる
ここまでいろいろ対策してきたら、マイナス思考やこわさを払拭する「合図」を決めましょう。
脳科学にくわしい知人に聞いたことがあるのですが、自分で切り替えの「合図」を決めるのはとても有効だそうです。
たとえば、マイナス思考になったときに、「あ、やめやめ!自分のやりたい演奏をしよう」→手をパンと1回打つ。
演奏前に気合いを入れたいときに、「よし、落ち着いて演奏しよう!」→膝をぽんとたたく。
など、自分が思考と行動を切り替えるときの合図を、体の動きと一緒に決めて、いつも実践します。
本番前なども、その合図をすれば「よし!」と気持ちが切り替わります。
毎回、決まったハンカチを握りしめる、なども効果的だと思います。
さいりえ
おわりに。あなたがピアノ・音楽でやりたいことって何?
この記事では、本番がこわい、緊張してミスしてしまう…というご相談に、いろいろな角度から対策を考えてみました。
もう一度まとめます。
- まず練習で改善
- イメージトレーニング
- 通し練習や動画配信など、さらなる経験を積む
- 不完全で大丈夫、と自分に伝える
- 自分の長所を確認
- 思考をコントロール
- おまじない的な合図を決めてみる
ところで、
- あなたがピアノの演奏や音楽との日々でやりたいことって、何ですか?
- ずっとピアノを弾いて、1年後、5年後、10年後、見たい景色はどんなものですか?
目の前の本番がどうしてもこわい、逃げたい、ミスしたらどうしよう…
そんな考えが頭を占めるときは、あなたの中のもっと奥の願いや思いをもう一度見つめてみると、きっとまた変わるのではないでしょうか?
この記事が何かお役に立てば幸いです!
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