この記事では、ふだんのレッスンに1曲加える「副教材」について紹介します。
わたしは生徒さんに、できるだけ多くの曲を経験してしてもらうように意識しています。
つぎのような理由からです。
- 経験を積むため
- 譜読み力や曲をとらえるための音楽基礎力アップのため
- いろんな曲を知って欲しい
- いつか大きな曲を弾くときのために少しでも経験しておいてほしい
- 可能性や能力を最大限伸ばすため
この記事では、副教材として取り組むのにおすすめの曲集や、取り入れ方や進め方についてご紹介します!
もくじ
副教材の取り入れ方・進め方
この記事では、レッスンで長い時間かけて取り組む曲集や、発表会やコンクールで弾くようなメインの曲以外の曲を「副教材」と呼んでいます。
例としては、こんな感じです。
副教材の例ふだんはハノン(スケール・アルペジオ)、モシュコフスキーの練習曲、バッハのシンフォニア、古典派のソナタ、ロマン派1曲のレッスン。このほか、副教材に短めの曲を1〜2曲プラス!
レッスンで課題として選んで進めていってもいいですし、意欲的な方は自宅練習でどんどんいろんな曲に取り組まれると良いと思います。
以下は、副教材の取り入れ方、進め方の一例です。
- メインの曲を決め、副教材はまわしていく
- 時代やスタイルを順に経験していく
- 目標も、メリハリを持って!
- 1−2ヶ月くらい、譜読み&経験期として多くの曲をトコトンやるのもあり
ここからは、副教材におすすめの曲集をご紹介していきます。
さいりえ
ピアノレッスンや練習の副教材おすすめ〜中級編〜
小学校高学年〜中学生はじめくらいをイメージしています(あなたの進度にあわせて選んでください)。
クラーマー=ビューローの練習曲集
ツェルニー40番が終わったらモシュコフスキーやショパンのエチュードに入る人も多いです。
でもモシュコフスキーとショパンは1曲が長いため、急に時間がかかってしまいます。
かといってツェルニー50番は、広い意味での表現技術を磨くには少し物足りない気がします(わたしは50曲やりましたが…)。
そこでおすすめなのが、クラマー=ビューローの60の練習曲。
学生音楽コンクールの小学生の部でも課題に出たりしますね。
副教材にもおすすめな理由
- 指を動かす速い曲、というだけでなくいろんな技術表現が出てくる
- 曲想や和声の変化もツェルニーより色彩があって美しい曲が多い
- 調もいろんな調がある
- 1曲が2ページ程度のものが多く、1〜3週間程度でどんどん進める
モシュコフスキーやショパンのエチュードを、何週もかけてじっくりやりながら、クラマー=ビューローのエチュードを1〜2週間に1曲ずつ進めていきます。
さいりえ
バッハのフランス組曲
バッハのインヴェンション→シンフォニア→平均律 という「多声作品コース」をずんずん進む中で、ちょっと足なみを緩めて「舞曲コース」にも進んでみてください。
主なものとして、
- フランス組曲
- パルティータ
- イギリス組曲
があります。
ガッツリやるなら、全曲やったりパルティータにチャレンジしたりしてもいいですが、
ふだんのたくさんのレッスン課題の中に1曲ずつ足していったり…というのもアリかと思います。
副教材にもおすすめな理由
- バロック時代の音楽で重要な、さまざまな舞曲が出てくる
- 1曲1曲は1〜2ページと短く、難易度もインヴェンション〜シンフォニア程度なので取り組みやすい
- アルマンドからジーグまで全曲少しずつ取り組むと立派なレパートリーに!
- 芸術作品として美しい!
ロマン派の作品に慣れる
あこがれの、ショパンのバラードやリストの愛の夢…などを弾く日のために、だんだんロマン派の作品に慣れていきましょう!
- 歌唱的なメロディの表現
- 感情をこめる、イメージを広げる経験
- ロマン派の自由な形式やさまざまなスタイル
- 各作曲家の作風、音づかい
など、ロマン派ならではの経験や勉強はとても大事です。
ですが、いろんなロマン派の曲にまんべんなく&じっくり取り組むのはなかなか大変です。
もも
さいりえ
そんなときに、副教材として短めの曲をレッスンの終わりの10分などに取り入れていきます。
中級程度でしたら、このあたりがおすすめです。
- シューマン 子どもの情景
- メンデルスゾーン 無言歌集
- ショパン ワルツ、ノクターン
とくにシューマンの子どもの情景は、よくレッスンでも使います。
- 音楽的な譜読みの練習
- 楽譜を見て演奏表現について考える練習
- 多声の弾き分けやバランス
- 各曲のイメージづくり
…など、短い曲の中でできることがたくさんあります!
シューベルトの即興曲やブラームスのラプソディなども中級の生徒さんにやってもらうことがありますが、これらは長い曲なので副教材というよりは1〜2ヶ月でじっくりやることが多いです。
近現代の作品に慣れる
近現代の作品も、経験を積むためにやっていきます。
現在の演奏の幅を広げるためにも、また将来に近現代の大曲をいつか弾くためにも、その入口となる小品をやっていくのはとても大事です。
バッハやベートーヴェンなどとはまた違う個性がありますので、日々のピアノ練習の楽しみにもなりますね!
- ザ・クラシック!とは違う和声やリズムを味わう
- 多彩な音色、表現にチャレンジ
- 個性いろいろなスタイルの譜読みの練習にも
- フランス音楽やロシア音楽などの入り口を学ぶ
中級程度の方におすすめなのは、次の小品集です。
- ドビュッシー 子どもの領分
- プロコフィエフ つかの間の幻影
- バルトーク ミクロコスモス
- グリーグ 抒情小曲集(近現代というより北欧音楽の経験に)
いろんな曲がありますので、生徒さんの得意不得意や、いままでの経験を考慮して、必要そうなものを選んでいきます。
使い方の例
- バッハもソナタもしっかり構築して弾けるけれど、音色の種類が少ない→ドビュッシーの「小さな羊飼い」で音色や響きに集中
- やさしい曲、歌う曲は得意だけどスピード感やメリハリが少ない→バルトークのミクロコスモスでリズムの強調や打楽器的な奏法にチャレンジ
中級程度の副教材として使う場合、ミクロコスモスは4巻くらいからがおすすめです。
↓YouTubeで弾いています!
ピアノレッスンや練習の副教材おすすめ〜上級編〜
次は上級編です。
専門的にレッスンを受けている中学生〜高校生以上の方をイメージしています。
ふだんバッハの平均律、ショパンのエチュード、ベートーヴェンのソナタ、ショパンのバラードなどを弾いている…くらいのイメージですね!
上級になってくると、
- 1曲が長くなり、時間がかかる
- レッスンの内容も深くなり、1曲の一部分でレッスン時間が終わってしまうことも
- コンクールや受験に向けて、同じ曲に長く取り組むことが多くなる
など、内容が深くなる分、どうしてもレパートリーが少なく限られたものになりがちです。
でも、いちばん伸びる時期ですし、経験をもっと積みたいですよね!
あなたに合った取り組み方で良いので、ぜひいろんな曲に触れてみてほしいです。
上級の副教材にやってみたい曲は多岐にわたるので、ここでは一例のみご紹介します。
- バッハのパルティータ、イギリス組曲(舞曲1曲ずつでも)
- ハイドン・モーツァルトのソナタ(ベートーヴェンをする機会が多いので)
- シューマン 幻想小曲集/ウィーンの謝肉祭の道化より 第2,3,4楽章(ほか)
- ブラームス 小品集
- ドビュッシー 映像、版画など
- スクリャービン 詩曲、小品集
- プロコフィエフ ロミオとジュリエット
- ラフマニノフ 前奏曲集
- バルトーク ミクロコスモス、組曲ほか
どれも、じっくりやろうと思うと大変です。
1曲ずつが短め、というだけで、内容的には大曲に取り組むのと変わらない密度です。
完璧主義の人や譜読みが苦手な人にとっては負担に感じられるかもしれませんが、「ちょっとでも経験したことがある」というだけでもずいぶん違うものです。
さいりえ
上級でご紹介した楽譜の一部を一覧にしておきます。
いろんな曲にどんどん触れて、音楽観を広げよう!
この記事では、ピアノレッスンや練習の副教材についてご紹介しました。
譜読みが早い人はどんどんいろんな曲を体験されることをオススメします!
苦手な人も、少しずつ取り組めば少しずつ慣れてくるはずです。
わたしはレッスンでもかなりの量を宿題に出します。
この記事では短めの曲を副教材のおすすめとしてピックアップしましたが、長い曲でもどんどんやっています。
中学生くらいでも、時期によってはこのくらいの量をやってもらうことがあります。
- シューベルトの即興曲2〜3曲、ショパンのロンドや変奏曲を複数曲どんどん譜読みしていく
- 平均律2曲とパルティータ1曲の全曲、ショパンのエチュード3曲を一度のレッスンで持ってくる
- 8人くらいの作曲家の曲をどんどん譜読みしていく
- レッスンで話題になった曲をすぐ宿題にして弾いてみる
※時期によっては、曲数をしぼってじっくりやることもあります。
主体的に自分でいろんな曲をやっている人もいます。そういう人は吸収量も多いです!
レッスンでは
・ざっくりたくさん
・数曲をじっくり深くのメリハリをつけています。
昨日の中学生も
スケール、平均律、モシュコフスキー、ショパンエチュード、ベートーヴェン全楽章、シューマン1つの楽章、バルトークミクロコスモスを持って来ました。譜読み力や考える力も鍛えられます。
— さいりえ / 崔 理英 ( Piano ) (@smomopiano) March 8, 2020
いろんな曲を弾くと、良いことがたくさんあります。
ぜひ、今日からの練習やレッスンに取り入れてみられてください。