コンサートや受験、コンクールで複数の曲を弾く機会はけっこうあります。
ドーンと自由曲を1曲弾くなら、その曲に集中して練習・演奏するといいですよね。
でも、全然違う時代やタイプの曲を、数曲続けて弾かなければならないときは?
どうやって準備して、演奏すればいいんでしょうか。
1曲ずつ練習しているだけでは、いざ舞台で数曲を通すときにうまくまとまらないことがあります。
本番の数週間前から、こんな練習も増やしてみるといいよ!ということをご紹介します。
もくじ
曲ごとのちがい、メリハリを考える
1曲でも数曲でも同じですが、その曲の持つ個性や特徴、大事なポイントをしっかり確認しておきます。
複数曲の場合、それぞれの「ちがい」にも注目すると、より個性が引き立つでしょう。
時代や作曲家、様式の違いをよく知る
クラシック音楽を演奏する上で基本となることです。
まずは、1曲ごとの特性を、深く鋭く見極められるようにします。
- 弾いている曲がいつの時代、どのような時代背景で書かれたのか?
- その時代の作曲家たちの特徴は?
- どんな楽器・場面で弾かれていた?
- 同じ作曲家でも、初期と後期で全然ちがうことも。
曲ごとのメリハリや個性の違いを出せるように考える
つぎに、2曲、3曲と並べたときに、それぞれの個性を生かすためにどうすればよいか?ということを、具体的に考え、実践していきます。
- 音色
- タッチ
- 拍の感じ方
- 呼吸
- 全体的な響き
- メロディの表現
・・・など、要素をあげていくといろいろあるんですが、この単語だけではちょっと表現できないですね。
曲が変わったとたん、空気がガラッと変わる!!背景がふわっと入れ替わる!
そんなイメージです。
そのために、いろいろな実践をしていきます。
同じ曲でも、一緒に弾く曲によって位置づけが多少変化することもある
これはついこの前レッスンで出てきた話です。
同じ曲だからいつも同じ顔をしている、とは限りません。
たとえば、ショパンのエチュードOp.10-5『黒鍵』。
基本の音楽はもちろん同じですが、組み合わせる曲によって多少変わってもいいんじゃないでしょうか。
- バッハの平均律とセットで弾くときは?→ショパンらしく、ロマンティックで華やかに。技工面もきらびやかに。
- 同じショパンの練習曲集のOp.10-1やOp.10-4のあとに弾くときは?もしくは、作品10を全曲弾くときは?→壮大な10−1、情熱的な10−4と違う一面、軽やかさや楽しみを目立たせる。
- ロマン派や近現代の、大曲の前に弾くときは?→あまり濃すぎず、さらっと流暢に。
人間だって、相手によって見せる顔を変えたりしますよね。
そんなふうに、曲の顔にもいろんな一面があると思います。
全体を見通す
1曲ごとのイメージをかためながら、「ステージ全体」のことも考えてみましょう。
全プログラムを通してみる
人によりますが、意外と、本番直前まであまり全曲を通さない人もおられるようです。
「まだ、この曲のココが気になるから・・・」というような心理がはたらいているのかもしれません。
でも、できるだけ早い段階から、プログラム全体を通しておくことをおすすめします!
理由は、次のとおりです。
- 舞台に上がってから、弾いて下りるまでの、ステージ全体のイメージがわくから
- 曲の順序や組み合わせによって、少しずつ演奏も変わってくるから
- 全体を通す体力や集中力が自分に備わっているか、確かめられるから
曲の演奏順を考えてみる
自由に順番を決めていいのなら、いろんな曲の順番を考えてみましょう。
- 時代順に並べる
- エチュードを先に弾き、その他の曲をあとに弾く
- 調性のつながりを考えてみる(近親調などを前後の順番にする)
- 速い曲、遅い曲を交互に組み立てる
- 聴いている人がホッとできる曲と、引き込まれる曲を組み合わせる(緊張と弛緩)
ほかにも、こんな考えかたがあります。
1曲めは?・・・
- お客さんが聴きやすい曲
- 安心して弾ける、弾き慣れた曲
- 多少緊張していても、落ち着いて弾き始められる曲
- パッと1音目から世界をつくれる曲 など
さいごの曲は?・・・
- 華やかにシメられる曲
- 体力、集中力、精神力を使う曲(最後にしないと、次の曲があると大変)
全曲でひとつのプログラムとして、物語のように計画する
順番が決まったら、全体をどのように組み立てていくのか、考えてみます。
1曲1曲をどう並べて(演奏して)いくか?というのは、、音楽の時間の流れをどうつくるか?ということでもあります。
(例)
など、はじめから終わりまでをひとつのストーリーのように作り、
- その流れを感じて弾けるか?
- 聴いている人にそのストーリーを感じてもらえるように弾けるか?
ソナタの全楽章や、組曲全曲などをしっかり弾いていくと、複数曲の組み立てもイメージがわきやすいと思います。
(ベートーヴェンのソナタは、第1楽章から第3もしくは第4楽章までがひとつの物語・世界として成り立っていますよね)
曲と曲のあいだも大事
複数の曲を弾く場合、曲と曲をどうつなげるのか?どう、「間(ま)」を感じるのか?というのも、とても大事です。
曲間のとり方を考える
1曲めと2曲めのあいだを、どのようにつなげるのか?空けるのか?
- 前の曲のさいごの音がなってから、しばらく余韻を楽しむ
or すぐに次の曲に流れこむように弾く - 1→2曲めはしっかり分けるけど、2→3曲めはひとつの流れでつくる
- 1曲めからさいごの曲まで、ひとつの物語として途切れないように弾く
or ある場所で、ふっと息を抜く(お客さんも、そこでいったんホッとする)
など、曲間だけでもいろんな選択肢があり、曲の雰囲気や、ステージ全体がずいぶん変わります。
方法をどうするか、よりも「こんな感じにしたいから」という理由がだいじです!
- ずっとひとつの世界をつくりたい
- ◯曲目の曲で、雰囲気をガラッと変えたい
- 出だしがノリにくくて失敗しちゃう曲があるので、気をつけて入りたい
など、いろんな理由がありますよね。
曲間も、音楽づくりのひとつ。
ぜひいろいろ、ためしてみてください。
曲の終わりから次の曲の出だしだけを取り出して練習する
曲間をこうしよう!とイメージやアイディアが出てきたら、「前の曲の終わりの数小節→つぎの曲のはじめの数小節」を取り出して練習してみます。
いつも、それぞれの曲のはじめから練習していませんか?
曲間をどうとるかで、雰囲気も弾きやすさもテンポ感もガラッと変えることができますよ。
変奏曲・ソナタの曲間について
変奏曲やソナタ全楽章を弾くときの、各変奏・楽章の「あいだ」も、意識してください。(こちらは、本当に音楽の一部なので、もっと重要ですよね!)
聴いている人のことを想像する
さいごにひとつ。
聴いている人の心の動きを想像してみてください。
そのためには、あなたが客席で、映画や演劇を観ているときのことを思い浮かべてください。
もしくは、大好きな小説を読んでいるときのことでもかまいません。
「出だしでグッと引き込まれて、そのあと少しホッとして、それから…」
そんなふうに、はじめから終わりまで、心の動きがありますよね。
演奏の舞台も同じです。
最初に出す音から、いちばん終わりの音まで、お客さんになにを感じてほしいか、考えてみてください。
そうすれば、新たなイメージやアイディアが浮かぶかも?
まとめ
この記事では、いちどのステージで複数の曲を弾くときの考えかたや練習方法をご紹介しました。
コンクール以外にも、受験やコンサート、リサイタルでも同じことが言えます。
ただ、コンサートやリサイタルは自分でプログラムを組めることが多いので、はじめから全体の流れやバランスを考えることもできますね!
複数の曲を弾けると、1曲だけ弾くときよりもさらに、あなたの個性や考えかた、音楽への思いがはっきりと演奏に表れてきます。
「こうしよう!」という意志・計画をもって演奏できるといいですね。
▼参考記事▼
コンクール期間は進度が遅れがち?課題曲だけ練習するのはもったいない!
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