何十時間、何百時間と練習を重ねて、いよいよ本番。
イメージトレーニングもたくさんしたし、あとは会場に入って落ち着いて弾くだけ・・・!
のはずが、思いもよらないアクシデントやハプニングに見舞われてしまうことがあります。
この記事は、わたし自身が経験したことや目の当たりにしたことを中心に、そんな本番前後の非常事態についてご紹介します。
「こんなこともありえるかもしれない」と知っていれば、いざというとき少しでも冷静に対処できるかもしれません?
さいりえ
もくじ
本番前のアクシデント
まずは、本番の日までのアクシデントや非常事態。
コンクールの日程が変更になる
中学生のときでした。
半年かけて◯月△日!と目標を立てて練習してきたコンクールの日程が、台風で突然延期に。
たしか前日に連絡が来た記憶があります。
演奏内容も集中力も△日に向けて高めてきたので、一瞬こころが折れそうになりました。
さいりえ
自分や共演者が出演不可能になる
これはわたしが出演不可能になったときの話です。
2週間前にドクターストップが出て、コンサート自体を中止・延期にするのか、代役の方に演奏していただくのか迷いました。
でも、コンサートを楽しみにしてくださっている方がたくさんおられたので、信頼できる方に代役をお願いすることができて、ホッと一安心。
これまで、コンサートをキャンセルすることなど一度もなかったのですが、申し訳なく思うとともに、こんなこともありえるのだと思いました。
電車が人身事故などで止まって会場に大幅に遅刻する
これは生徒さんから聞いた話ですが、コンクールの当日、人身事故で電車が止まって何時間も遅刻してしまったそうです。
十分早めに出ても、何時間も止まるほどの遅延・運休ならどうしようもないですよね・・・
遅れたことそのものだけでなく、
- 「どうしよう」と不安に思ったり
- 振替輸送などの情報を調べて疲弊したり
- 人身事故なだけに精神的なショックもあったりして
そんな状態でやっと会場に着いても、本番も引きずって演奏してしまうケースもあるかもしれません。
さいりえ
出演順が変更になる
人身事故や台風などで大幅に遅刻したり、複数の人が集合時間に着けなかったりすると、出演順が変更になることもあります。
「全部の審査が終わって、いちばん最後に弾いてください」と言われることもありました。
こころを立て直すのに、注意が必要ですね。
参加受付が正確にできていなかった
会場に行ってみると、申し込んでいたはずのコンクールなのに受付ができていなかったとか、送られてきた出演番号と違ったとか、運営側の手違いもありました。
たいてい、その場で確認した上でちゃんと弾かせてもらえると思いますが、動揺しちゃいますよね。
舞台に出てからのアクシデント
つぎは、「よし!」と意を決して舞台に出てからのことです。
鍵盤が汗だらけ
前の人の演奏で、鍵盤が汗だらけのこともあります。
「血でにじんでいた」という話も聞いたことがあります。
念のため、ハンカチを持っていくほうが良さそうですね。
曲が違いますよと言われる
ある試験で、弾こうとしたら「その曲は規定外ですよ」と言われた話も生徒さんから聞きました。
インターネットの要項と紙の要項で細かい内容が違ったそうです。
その場で規定内の別の曲を弾くことができたので良かったのですが、曲のレパートリーがなかったら失格だったそうです(試験曲以外もレッスンでやっていてよかったです)。
まさに「演奏中」のアクシデント(演奏面以外で)
弾いている最中にある、さまざまなアクシデント。
ここでは、演奏の内容以外のアクシデントを書いていきます。
共演者が舞台上で倒れる
昔いちど体験したことです。
かなり動揺し、心配しました。
曲の最後のほうだったので、なんとか最後の音まで弾ききり、ふたりで舞台袖に戻れましたが・・・
まだまだ曲の途中だったらどうしていただろうか、と今でも考えることがあります。
演奏中に大地震
大きなコンクールの本選を聴きに行ったときに、大地震に見舞われました。
災害認定されるほどの大地震です。
でも弾いている方はそのまま弾かれてましたし、後からインタビューで「気づかなかった」と言っておられました(すごいです)。
ホールの中は何事もなく、怪我をされた方もおそらくいなかったと思うのは不幸中の幸いでしたが
「こんなことあるんだ」と思いましたね・・・
最近は、開演前のアナウンスで「大地震が来たときは公演を中止することがございます」などと案内するホールも増えましたね。
演奏中に椅子から落ちる・落ちそうになる
これも何度か遭遇しました。
おそらく椅子の足に滑り止めシール?のようなものが貼られていなくて、ツルツルの床だったりして。
ピアノから少し離れたところに椅子を置いて弾き始めると、少しずつ後ろにずれていってしまうんです。
一度後ろにいくと、姿勢が乱れるのでどんどん後ろにいってしまいます。
椅子の場所や姿勢・奏法など自分で気をつけられることもありますが、あまりに床がツルツル滑るとこわいですね。
演奏中に大きな雑音が入る
これは皆さんどこかで経験されてるでしょうね。
- 携帯電話の音
- 咳の音(少しなら仕方ないですが「グオッホォォォ!ゲホォ!」みたいなやつ)
- 子どもの大声(子ども入場可のコンサート以外で)
- スニーカーのマジックテープをビリビリ鳴らす音(演奏が退屈だったんですかね・・・ごめんなさい)
- 飴ちゃんの袋やビニール袋、プログラムの紙の音
ある程度音が鳴るのはしかたないと思うのですが、あまり堂々と大きな音を鳴らされるとちょっと気になってしまいます。
ちなみに数年前、ジャズ・ピアニストであるキース・ジャレットのソロコンサートに行ったのですが、客席の咳の音が気に食わなかったらしく演奏途中でお手上げのポーズをして舞台袖に戻ってしまい、そこでコンサートが終了してしまいました。
会場は騒然としていましたね・・・
演奏途中で弦が切れる
試験やコンクールで弦を切った人がいた、という話は実際に何度か聞いたことがあります。
最高音のほうで、曲のクライマックスで切っちゃった、とかならそのまま最後まで弾いたほうが良いと思いますが、
曲の序盤だったり重要な音の弦が切れたりした場合はどうすればいいんでしょうね。
替わりのピアノが会場にあるなら、途中でいったんやめるかなぁ・・・
ドレスの部品が取れる、肩ひもが落ちる
高校生くらいのときのこと。
ふわふわのファーが襟元についたドレスだったのですが、演奏中に白い羽がフワァ・・・と鍵盤に乗ってしまったことがあります。
気になって、手で払いたいけど演奏中だからそんな余裕がなくて、でも気になって・・・と大変でした。
(途中の長めの休符でそっと払いました)
肩ひもが落ちないかどうかも、いつも気になります。
椅子といっしょで、いったんズレ始めると修復がむずかしいんですよね。
肩ひもどうしの幅を狭めたり、いろいろ対策しています。
鼻水が出る
舞台上があたたかいからか、演奏中に鼻水が出ることもあります。
昔、恩師に「演奏中に奏者が鼻水をすする音は雑音です。興ざめします。たれてもいいから、絶対にすすらないように」と教えられ、
演奏中は絶対に鼻をすすらないようにしていたわたしですが、
リサイタルで本当に鼻水がやばくなったことがありました。
たしかラフマニノフのコレルリの主題による変奏曲だったのですが、20分ほど休みなしの曲。
「この変奏が終わったらこっそりすすろう」「無理だった。次の変奏が終わったら・・・」と探りながら2〜3分過ごしてしまい、大きな音を出すところでエイ〜とすすったことがあります。
対策・・・舞台袖で鼻をかんでおく、くらいしか思いつきません。
伴奏の楽譜が飛んでいく
これも遭遇したことがあります。
譜めくりの方が舞台にいればなんとか修復できそうですが、自分ひとりだったらどうしようかと不安に思いますね。
対策・・・暗譜する、飛ばないように台紙をつける、リハーサル時に空調について確認しておく、など
指がしびれてくる
これは本当に恐怖でしたね。
大学院入試のときでした。
バッハとプロコフィエフを弾いたんですが、バッハの最後のページあたりで、突然左手の小指がビリビリビリとしびれてきて。
まったく感覚がないんです。
曲間でなんとか治らないかと思って指をこすったりしていたのですが、感覚が戻らず、あまり間を空けすぎてもいけないだろうと思って、そのままプロコフィエフを弾きました。
感覚がないのになぜ弾けたのかよくわからないですが、生きた心地がしませんでした。
(しかし先生によると「そんなことになっているとは、わからなかった」そうです)
それから数ヶ月は本番でも再発しなかったのですが、また次はコンチェルトの本番という大舞台で同じことになりました。
そのとき「あ!!息を吸ってない!」と気づいて、
息を吐いて→吸って、と繰り返しながら弾くことでなんとか舞台上で回復。
それからは、再発していません。
呼吸だけが原因だったのかは不明ですが、わかるまではこわかったですね。
演奏上のアクシデント
演奏上のアクシデントも、それはもういろいろとありますよね。
暗譜が飛んだ、ループした、とんでもない音を出した、はじめの音を忘れた、共演者と盛大にずれた、などなどありますが
たぶん演奏内のアクシデントはいろいろと可能性を想像しやすいと思いますし、書き出すとキリがないので、ここでは割愛します。
思いがけないアクシデント。どう対応したらいいの?
ここまで、本番前後のアクシデントについて体験談を中心に書いてまいりました。
それぞれのアクシデントに対して、どうすれば良いのか?
ここに書いていないような「想像もつかないこと」が今後起こる可能性もあります。
なにか気をつけられるとすれば、
- 音楽と、お客さんのこと(快適さや安全)を第一に考える
- 主催者やスタッフの方に相談する
- 演奏が始まる前に対処できることはする
でしょうか。
さいりえ
無事に演奏するだけで、すごい貴重!
さいりえ
もも
とにかく、
- 無事に会場まで行って
- 最後の音まで無事に出して
- 舞台袖に無事に戻る。
これだけで、どんなにすごいことか!
本番前に、演奏のあれやこれや細かいことを気にしてしまうかもしれませんが、
無事に弾けるだけで十分貴重なことなんだよ。
雨ニモマケズ風ニモマケズ、アクシデントニモマケズ、精いっぱい演奏していきましょう。
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