ショパンのエチュード(練習曲)。
ピアニストの最高峰レパートリーの一つでもあり、必須でもある曲集ですね。
いつかは・・・と憧れる人も多いと思います。
さいりえ
さて、そんなショパンのエチュードですが、楽譜はどこの出版社のが良いのか?と悩むことはありませんか?
ショパンはいくつもの自筆譜を残していたので、版によって音やアーティキュレーション、指示などが異なることも多く、どの楽譜を使うかで演奏が大きく変わってしまうこともあります。
この記事では、ショパンのエチュードの楽譜で重要とされるものや、おすすめの楽譜を紹介します。
さいりえ
もくじ
ショパンのお国、ポーランドの出版楽譜
まずは、ショパンの祖国ポーランドで出版されている2社です。
21世紀の新しい定番、エキエル版
ナショナル・エディションとも呼ばれています。
ポーランドの国家事業として編纂され、ショパンコンクールの推奨楽譜ともされている、エキエル版(ヤン・エキエル)。
自筆譜や各地で出版された初版、再版譜の音やフレーズ、指づかいなど研究を重ねて作られました。
アクセントのようなデクレッシェンドのような独特の表情記号(>の長くなったようなもの)が多用されているのも特徴(ショパン特有の、歌う音の表情を表しているとされています)。
注釈も多く、難解な部分もありますが勉強になる版です。
長年親しまれているピアニストの録音やパデレフスキ版などの従来の楽譜に慣れていると、「えっ?」と思うような音が採用されてる部分もあります(エチュードに限らず、バラードなどでも)。
ですがショパンの意図をもっとも忠実に再現している楽譜とも言われ、近年は音楽高校や音楽大学、ピアニストでもエキエル版を使用している人が増えています。
21世紀の新しい定番と言えるでしょう。
持ち運びに便利?ミニチュア版の楽譜もあります!
根強い人気?パデレフスキ版
ポーランド音楽出版社が制作したショパン全集。
パデレフスキ監修によるため、パデレフスキ版と呼ばれています。
わたしが学生のときは、「ショパンといえばパデレフスキ版」という感じでしたので、わが家にはパデレフスキ版のショパンがたくさんあります。
あらためてエキエル版と比較してみると、音や指づかいはもちろん、スラーの長さや位置、cresc.や強弱記号のタイミング、アーティキュレーションなど違うことがたくさんあって戸惑います。
完全にエキエル版を全採用というわけではなく、エキエル版よりでパデレフスキ版の解釈も借りる、という感じで弾いています。
また、エキエル版は扱いが難しいのと高額なため、生徒さんには、はじめの1冊にパデレフスキ版をすすめることもあります。
さいりえ
研究するなら
先にあげたエキエル版も細かく研究できる楽譜ですが、こちらも充実した楽譜です。
ウィーン原典版
高校生のとき、大学の先生に薦めていただいた版です。
作曲家の自筆譜や筆写譜、初版本、版下などを比較検討し、確実な出典に基づいて校訂・編集されています。
曲集によって校訂者が異なりますが、ショパンのエチュード集は、巨匠ピアニストのバドゥラ=スコダが校訂、小坂裕子氏が運指を手がけています。
曲集によっては、上にあげたエキエル氏が校訂しているものもありますよ。
注釈がとても細かく、各ページ内に書かれているのが大きな特徴です。
さいりえ
練習するなら
さて、ショパンのエチュードといえば技術的な難易度も高く、美しく演奏しようと思うとあらゆる技術や手のしなやかさが必要になります。
ただ漫然とゆっくり⇔速くの練習やリズム練習を繰り返すだけでは、まったく弾けるようになりません。
そこで、曲に合わせた奏法、音色そして技術の練習が必要になります。
そんなときに役立つのが、技術面・練習方法の提案や解説が豊富な楽譜です。
コルトー版
コルトーはピアニストで教育者でした。
そのためコルトー版では独自の解釈が加えられ、どのようなイメージで演奏するか、腕や手首、各指をどのように使うかということが細かく提案されています。
各エチュードのパッセージをいくつもの要素に分け、みっちり合理的に練習できる練習メニューはとても貴重。
高校生のときはコルトー版を開きっぱなしにして、あらゆる練習法を試していました(バラードやソナタも出版されています)。
楽譜やさんにはたまに輸入版もありますが、エチュードやバラードなどは日本語版がありますのでぜひそちらを探してくださいね。
コルトーは5指の独立や手首の柔らかな打鍵など、徹底的に鍛えるメソッドも出版しています。
こちらも高校生のとき使っていました。
全音楽譜出版社の山崎孝版
2005年に出版された新しい楽譜です。
京都芸大の先生が講座でおすすめされていたので購入したのですが、とても使いやすく勉強になります。
こちらもコルトー版と同じく練習メニューが丹念に考えられています。
また、各曲の解説は読み物としてもとても興味深い。
日本人の方の編集なので、小さめの手でも弾けるように配慮されている印象があります。
こちらもおすすめ
楽譜ではないですが、ピアニストでもあり指導者としても著名なパスカル・ドヴァイヨン氏の著書もおすすめです。
- 各エチュードの目的
- 技術的なポイント
- いかに音楽的に演奏するかの具体的なポイントと練習方法
が、お料理のレシピにたとえてくわしく読みやすく書かれています。
ピアノの横に置きながら練習されると良いと思います!
Kindle版も!
最近、Kindle unlimited (月額980円で多くの本が読み放題になるAmazonの電子書籍サービス)に入ったんですが、その中でこんな面白いものもありました。
なんと、ショパンのエチュードをはじめ、バラード、スケルツォ、ノクターンなど10冊の楽譜がひとつにまとまっている書籍です。
これを見てガッツリ練習するわけではないですが、スマホやタブレットに無料で入れておけるので、ちょっと確認したいことがあるときに便利です。
\本が読み放題/
※初回30日間無料
ショパンのエディションについての本
ところで今回、各版(エディション)についていろいろと調べていたら、こんな本を見つけました。
面白そうなので読んでみます!
まとめ
以上、ショパンの練習曲(エチュード)の各楽譜についての記事でした。
このほかにもヘンレ版やペータース版、春秋社版など多くの出版社から楽譜が出ていますが、わたしが主に使っている版をご紹介しました。
楽譜って何冊でもほしくなります!
まずは1冊、そして2冊3冊と見比べて、あなたに合う楽譜を見つけてくださいね。
参考記事
[2021年版]音楽高校の受験方法・課題曲・レベルの調べ方 指づかいはどう決める?[前編]演奏が大きく変わる3つの決め方