通常、レッスンでは何曲かのプログラムを持ってきてもらいます。
新しく譜読みして1週間にもならない曲もあれば、何か月も練習している曲、もしくは数年前に弾いた曲、などさまざま。
「たくさんの曲にチャレンジすること」が必要な時もあれば、「1曲にじっくり取り組むこと」がとても勉強になることもあり、個々の状況とバランスを見ながら一緒に進めています。
そんな中で、ある1曲を何か月も何年も弾くことにはたくさんのメリットがあります。
それは、次の3つです。
- 技術的にレベルアップする
- 曲への理解・気づきが多くなる
- 自分の成長を実感できる
順番に説明していきますね。
ぜひ、何度も弾いて、深く曲に向き合ってください。
技術的にレベルアップする
1つの曲にじっくりと取り組むことで、その曲の音型に手がなじんできます。
難曲をあっという間に弾きこなす技術や才能があれば別ですが、そんな人はほんのひと握り。
大多数の人は、日々の練習を積み重ねることで少しずつ弾けるようになります。
また、何度か人前で弾くことを経験すると、より学びが多くなります。
「弾きこんだ曲」「何度も舞台で弾いた曲」というのは音や雰囲気まで違うので、客席で聴いてもかなりわかるんですよね。
とくにまだ舞台経験の少ない10代の生徒さんにとっては「大事な本番で初めての曲を弾く」というのはなかなか難しいことなので、できるだけ事前に試演会をすることにしています。
弾きあい会に関する記事はこちら→レッスンイベント/弾きあい会
曲への理解が深まる、気づきが多くなる
長く取り組むことで技術面にも余裕が出てくると、その曲の持つメッセージや世界をより深く知り、感じることができます。
実際、レッスンの視点・内容も変わってきます。
- この和音のつながり、よくよく感じたらこんなに意味が深かったのか
- 何気なく弾いていたこのメロディ、ここと繋がっていたんだ!もっとだいじに弾こう
- 作曲家の他の作品を勉強してから弾くと、なぜだか胸にしみ入る
相手(曲)に関心を持ち、はたらきかけると、昨日も弾いていた曲が今日も1つ、新しい一面を見せてくれます。
自分の成長を実感できる
1つの曲を数か月、数年たって久しぶりに弾く……それを弾く「あなた」は、当時の「あなた」とは違います。
「あなた」という人生を歩んでいるのは「あなた」ひとりなので、演奏も世界にひとつだけ。
そのひとつさえも、時を経て変わっていきます。
感じることも、考えることも、気がつくことも。
また、演奏する姿勢も、タッチも、音色も、なにか成長していれば、曲が教えてくれます。
この時、「うまくなった」とか、「前より指が動くようになった」というような部分的なことにとどまらず、
自分が演奏しながらどんな視点に立っているかとか、見えるもの、聞こえてくるもの、などの違いを感じられることがあります。
今までとはまた違う自分を感じられたら……また違った演奏ができますね。
演奏家は何年も何十年も弾き続けていきます。
わたし自身も、長いものは20年以上、弾いたり寝かせたりしている曲があります。
それぞれの曲が持つ《揺るがないもの》は大切にしながらも、弾く人の人生が出る演奏は素敵だと思います。
フレッシュな演奏はその良さがあり、熟成された演奏にも味わいがあります。
お漬物と一緒ですね!
まとめ~ゴールは先へ!~
ピアノの練習・演奏をすることは、わたしにとってこんなイメージです。
ゴールに向かって山道を進んでいる→ゴール自体が動いていって→着いた~と思っても気づけばいつもゴールは自分の先の方にある
ところで、生徒さんに「1年前の自分と比べて何が変わったと思う?」と尋ねることがあります。
ある生徒さんは、「(自分の演奏に対する)理想が高くなった」と言ってくれました。
それはとても大きな成長ですし、そのことを生徒自身も実感できている、ということを嬉しく思いました。
レッスンでは、少しずつでもゴールを先に進められることも目指しながらやっています。
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