先日LINE@読者の方からいただいたご質問です。
ピアノの先生から「感情がこもってない・機械のようだ・心から湧いてくるような歌がない・頭で計算した感じがする」と言われます。
「感情」ってなんですか?
私は感情は人並みにはあるものの、感情を表現するための身体の使い方などのテクニックが足りないのでしょうか?
解決策など、ありますか?
ご質問者さまのバックグラウンドがわからず、演奏や練習の様子を拝見したわけでもないので完全な解決策は出せませんが、今回はこのご質問から
「感情を表現する、音にするってどういうこと?どうすればいいの?」というテーマで書いてみたいと思います。
もも
という人もおられるんじゃないでしょうか?
さいりえ
ですが、この記事で紹介するステップで曲と向き合っていけば、少しずつ答えを探せるようになってきましたので、紹介します。
ご参考になりましたら幸いです。
(ほかにもご質問をいただいているので、それらには記事のさいごでお答えしています)
もくじ
感情を感じたら、そのまま音になる…なんて魔法はない!?
まずはじめに大事なことを。
もしかしたら、
- 悲しいと心から感じて音を出せば悲しい音が出るのかな?
- 幸せそうに弾けば幸せを感じる演奏になる?
と思ったことはありませんか?
わたしも、そんな魔法が存在するのかなと思ったことがありますが、ハッキリ言います。
そんな素敵な魔法はありません。
もちろん、何も感じないで弾くよりかは多少雰囲気も変わるでしょうが、心に想うだけで魔法のように音がキラキラ〜〜と変化していくことはないでしょう。
さいりえ
と言っても、中にはその魔法らしきものを使えるような人もいます。それは、
- 感情を感じる心と、感情を音に表す回路や技術が 高度に備わっている人
- 鋭敏な感覚で、瞬時に音づくりできる人
- さまざまな経験を積んできた人
- もともと、その曲や感情に合う音色を持っている人
などです。
さいりえ
天性のものもしくは、熟練のわざ、ですね!
感情を音にこめていくステップ
わたしは感情を音にこめる?というのが、もともとすごく苦手でした。
- どうすればもっと情感のこもった音が出せるのか
- 多彩な音色が出せるのか
と、いつも悩んできました。
まず、イメージがわかない。
そして、漠然としたイメージがあっても、具体的な方法がなかなかわからないんです。
ですが、楽譜や音の中に答えを求めていくようになり、少しずつ道が見えてきました。
いまは、感情を音にするプロセスを次のようにとらえています。
🔸感情を音にするって?
1) 曲から感情を想像、読み取る
2) その感情にはどんな音、表現が必要かイメージがつく
3) その音を出すプロセスがわかる、探る
4) 実際に音を出す ※繰り返し
経験が増えれば1→4にパッと進む瞬間もたまにはあるかも
「悲しい気持ち→音になれ!」という魔法ではない
— ぴあのぷらすメモ (@pianoplusmemo) August 20, 2019
さいりえ
ステップ1:曲から感情を想像し、読み取る
作品から、感情を読み取ります。
- 作品が書かれた時代背景や作曲家の状況
- 作曲家が残した言葉
- 作品について書かれた本、語られた言葉
- 標題や調性、曲の様式
- 旋律、主題、モチーフなどの形
- リズム
- 和声の動き
- 曲の中で表れるさまざまな変化
- 表情記号や楽譜の中の指示
など、膨大な情報があります。
そして、経験を重ねてひとつの感情をひとつの作品の中で表現することができてきたとしても、別の作品ではまた新しい感情になるので、いつも試行錯誤です。
さいりえ
ステップ2:その感情にはどんな音、表現が必要かイメージがつく
もも
さいりえ
感情に共感できたからといって、そのままインスタントに音にできるわけではありません。
どんな音色なのか。どんな歌なのか。どんな世界観なのか。
あなたの中に浮かんでなければ、出せません。
だから、それを見つけてみてください。
なかなか難しいことかもしれませんが、とにかく「豊かな音楽、美しい音」をたくさん知っていることが大切です。
- 良い演奏を、生の音でたくさん聴く
- いろんな楽器やジャンルの音楽を聴く、知る
- さまざまな曲を弾く、知る
- いろんなことを教えてくれる先生にレッスンを受ける、レッスンを見学する
もも
うさぎ先輩
さいりえ
ステップ3:理想の音を出すプロセスがわかる、探る
もも
さいりえ
出したい音のイメージがついたとしても、すぐにグランドピアノという楽器を意のままに操れるわけではありません。
悲しい気持ちで弾けば、なんとなく悲しい音になってる(気がする)というのもありそうですが、ここはもう少し具体的に進めていきたいところです。
具体的に出したい音を出すための方法を探っていきます。
- どんな呼吸、からだの状態なのか
- 打鍵のスピードは?深さは?長さは?方向は?
- 次の音にどのように渡していくの?鍵盤の離し方は?
- フレーズの長さは?
- 各声部のバランスは?
- ・・・
項目をあげると、きりがありません。言葉にできない要素もたくさんあります。
実際にピアノに向き合って、いろんな音を探してみてください。
今までの経験で、ある程度ショートカットできる部分はあります。
たとえばレガートの技術が高い人とレガートが苦手な人なら、同じ表現を探すのにかかる時間は違うでしょう。
経験を積めば、
という段階にも到達できると思います。
でも、「自分はできてる」と思い込んで、そこでストップするのもこわいことです。
さいりえ
ステップ4:実際に音を出して確認し、繰り返す
すぐに理想の音が出なくてもかまいません。
というか、すぐ出せたら天才だと思います(この記事の中で、天才って何回言ってるでしょう)。
実際には、音を出しては聴きつづけ、
「あ〜ちがう」「もう少し・・・」「ちょっと変わった・・・?」「やっぱりまだ・・・」
なんてことの繰り返しです。
PDCAサイクルをまわしながら、少しずつ探していきます。
PDCAサイクルとは、次の行動順序のことです。
1.Plan(計画)
2.Do(実行)
3.Check(評価)
4.Act(改善)
PDCAサイクルを意識した練習方法については、以下の記事でも書いています。
魔法もいいけど、一歩ずつ歩いて探しに行こう!
わたしも10代のころから、
- どうすればもっと情感のこもった音が出せるのか
- 多彩な音色が出せるのか
と悩んできました。
いまは、この記事で紹介したステップでやっています。
わたしの場合、うまくいかないときは、ステップのどこかに問題があることが多いです。
言葉で説明できない部分や空気感もありますが、それも含めて、探しながら弾いています。
もも
さいりえ
補足〜ご質問への返答〜
今回のご質問には、ほかにいくつか質問事項がありましたので、こちらでお答えします。
ピアノの先生から、ピアニストの真似は良くない、パクってるだけと言われます
一流の人の真似をすることは決して悪いことではありません。真似してわかることもあります。良い音色や想像もつかなかったような表情、空気感などたくさん感じてあなたの演奏に取り入れてください。
ピアノに向いていないのでしょうか?音楽が好きなのに、そんな風に言われるのが辛いです
音楽が好きで弾いておられるなら、素晴らしいことですので、向いていないと思われる必要はないと思います。
・ただ、本当に感情を表現する演奏をめざすのであれば、この記事のプロセスは必要です。
・いつも先生に否定的に言われる&具体的に教えてもらえないのであれば、今の状況を変えることも考えられたほうが良いかと思います
ロシアンピアニズムの教室に行くべきでしょうか?
状況がわかりかねますので、わたしには責任をもった判断はできません。ごめんなさい。
この記事が、なにかのご参考になりましたら幸いです!
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