もも
うさぎ先輩
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さいりえ
音楽高校や音楽大学に入ると、協奏曲(コンチェルト)の伴奏をする機会が増えます。
本来ならソロ楽器とオーケストラと演奏する曲を、便宜上ソロ楽器とピアノで演奏することが多いんですね。
そのため、ピアノでオーケストラ伴奏パートを弾くことになります。
これが、なかなか奥が深い・・・!
元祖のオーケストラにはかなわないとは言え、最大限オーケストラらしく、そして作品の世界を表現したいですよね。
そこでこの記事では、コンチェルトのピアノ伴奏パートを弾くときに気をつけたいことを紹介していきます。
伴奏の練習に役立てていただければ幸いです。
さいりえ
もくじ
ソロ楽器を存分に引き立てる
コンチェルトは、ソロ楽器が主役です。
たとえばヴァイオリン協奏曲なら、ヴァイオリンパートやヴァイオリン奏者が存分に歌い、魅力を出せるようにサポートしましょう。
ときにはスッと背景に徹し、ときには合いの手。ときには先行して引っ張っていくこともあるかもしれません。
ffでもppでも、常に「ソロ楽器がどう聴こえているか?」と観察し、ピアノ(オケパート)はさりげなく調整すると良いでしょう。
もも
さいりえ
形式・主題・和声などをしっかりアナリーゼする
上にも少し書きましたが、コンチェルトはソナタと似た形式で書かれていることが多いです。
以下は、コンチェルトの作品形式の1例です。
- 3楽章形式
- 1楽章は重厚なソナタ形式(カデンツ付き)
- 2楽章はゆったりとした緩徐楽章
- 3楽章はロンド形式+華やかなコーダ
まるで古典派のソナタのようですよね。
そのため、
- 提示部・展開部・再現部はどこか
- 第1主題・第2主題はどれなのか。またその発展は。
- 各部分・主題の調性は?
など、基本的なことを理解しておくと、ぐんと弾きやすくなります。
とくにコンチェルトの場合、第1主題や第2主題をソロ楽器から提示するのか?それともオーケストラが先に提示するのか?というポイントも重要です。
(ひとりでソナタを弾くなら、ぜんぶ自分が弾くわけですが)
曲の形式・構成が頭に入っていれば、このように演奏法が変化します。
(例)
- 自分が主題を担当しているなら、たとえ伴奏でも主張する。
- なにげない合いの手のメロディなら、さりげなく自然に入る。
ほかのモチーフも同様で、曲の構成がわかっていれば弾き方のヒントになりますよ。
作曲家について知る
たとえばヴァイオリン協奏曲の有名曲の中には、こんな作曲家が書いた曲もあります。
- ブルッフ
- ヴィエニャフスキー
- パガニーニ
- ヴュータン
ピアノ曲だけを弾いていると、なじみのない作曲家ですよね(パガニーニはカプリースの主題が有名ですが)。
モーツァルトやベートーヴェン、シューマン、プロコフィエフなど、ピアノ曲をたくさん書いている作曲家のコンチェルトなら少しはイメージがつくかもしれません。
でも、まったく聞いたことのないような作曲家だと、どう弾いたらいいか見当もつかないこともあります。
そのため、作曲家のことを知る姿勢は大事です。
- いつの時代の人か
- どこの国で活躍した人か
- どんな作品を書いたか(いくつか聴いてみる)
- ここが特徴だな、素敵だなと思う部分を見つけてみる
これらを簡単にでもやってみることで、曲への向き合い方が変わります。
各楽器の音色をイメージする
コンチェルトの伴奏譜では、オーケストラパートが1台のピアノ用に編曲されています。
大譜表にポッポッと現れるさまざまな音符も、実はたくさんの楽器のいろんなラインが入っています。
それらを一様にエイッと弾いてしまうと、曲の世界観は出せません。
- このトレモロは弦楽器群のように
- このメロディはフルート?オーボエ?
- tutti(全員で奏する)部分は分厚く豊かに!
など、工夫すべきことが山ほどあります。
そのためには、いま自分が弾いている音は何の楽器なのか?と、知る必要があります。
これは
- 音源を聴く
- スコアを見る・読む
ことで、わかりますよ。
さいりえ
ただ「弱く弾く」わけではない。音量ではなく、音色でバランスをつくる
伴奏するときに、いちばん気になることのひとつがバランスですよね。
とくにコンチェルトでは、二重奏のソナタなどと違って伴奏に徹している部分も多いため、弱く弾かなければと思いがちです。
もちろん、ソロを食ってしまうほどうるさいのはダメですが、「弱く弱く・・・」とだけ思っていると十分な響きや表現が出ないこともあります。
- 同じ p でも、弦楽器群のザワザワした音で背景を作る
- 全体の音量は小さくても、重要なラインだけは遠くまで響くように発音する
- f だけど、ソロ楽器の音とぶつからないように(音を立てずに広がりをもって)
など、ぜひ音色でバランスを取ってみてください!
さいりえ
細かい音にこだわらないほうがいいことがある
オーケストラのすべての楽器の音を、10本の指で弾くのは不可能です。
ところが編曲楽譜によっては、
- 絶対に届かないような音が同時に書かれていたり
- ショパンのエチュードよりも難しい重音のトレモロがあったり
- リストよりすごい?オクターブの連続があったり
- 手が3本いるでしょ!と、無茶な楽譜割りになっていたり
ということもあるんですよね。
これ、あまりこだわらないようにしましょう。
すべての音を生真面目に弾くことよりも、
- 全体がオーケストラ伴奏のように作れているか
- その部分に合ったテンポ感や世界観が出ているか
- 重要なバスのラインやメロディ、和声が出ているか
という、全体観を重視しましょう。
物理的に厳しければ、音を省いても良いと思います。
聴く人が求めるのは、あなたが伴奏譜の楽譜と一音たがわず必死で弾くことではなく、曲にあった世界観をもってソロ楽器をサポートし、音楽を作り上げることです。
間奏カットする場合、演奏にも配慮が必要
コンチェルトでは前奏や間奏、後奏が長い曲もたくさんあります(以下、まとめて「間奏」と書きます)。
中には数分間、ソロが登場しないことも!
もちろん間奏も重要な曲の部分なのですが、残念ながら試験やコンクール、オーディションでは間奏を省略して演奏することがほとんどです。
さいりえ
と思いますが、しかたないですね。
音楽的に脈絡のない場所に飛ぶので、ある程度不自然になるのはしかたないのですが、せめてちょっとでも配慮しましょう。
- 和声的におかしくない場所に飛ぶ
- 音がおかしくなくても、表情やダイナミズムがまったく違うこともある。どのように移り変わるのか考える
- カット前とカット後の世界があまりにも違う場合は、思い切って呼吸をとって別物として弾く
- カットせずに練習してみる。「本来ならこうだった」の流れや音楽を知っておく
さいごの「本来ならこうだった」と知るのはとても大事です。
大きなドラマを経てたどりつく場所なら、そのドラマを知っておくことで、少しは演奏が変わります。
ソリストも短い間奏で気分を変えるのは大変だと思いますので、できる限り工夫してカット・演奏しましょう!
ソリストの思い入れやテンションを感じ取る
さいごはこれです。
ソリストと伴奏者のテンションに差があると、つまらなくなってしまいます。
すごく小さな音で上手にタイミングを合わせている伴奏も聴いたことがありますが、「ソロの人うまいな〜、ピアノも慣れてるな〜」というだけであまり感動できませんでした。
お仕事のように(ある意味お仕事なんですが)、変にこなれて伴奏するのはやめたほうがいいと思います。
ソロの人ほどの練習時間をかけないでしょうし、思い入れにも差があるのはしかたないかもしれません。
でも、一緒にひとつのすばらしい作品を作ろう!と思って演奏したいです。
- 大好きなコンチェルトで、伴奏できてうれしい!
- この楽器が入ってくるところ、たまらないのよね〜
- こんなふうな音楽にしたい!
と、積極的に音楽に関われば、演奏も変わりますし、ソロの人もさらにノッていけるのではないでしょうか?
まとめ
この記事では、「コンチェルトのピアノ伴奏パートを弾くときに気をつけたいこと」を書きました。
さいごに、わたしが学生時代から大好きな音源を紹介します!
ハイフェッツによる3曲のコンチェルトが収録されています。
わたしはこのCDが本当にお気に入りで、伴奏する予定もないのに、すべての音を覚え込むほどに聴いていました。
清廉、興奮、郷愁、いろいろなものを感じさせてくれる、わたしにとっては青春の1枚です!
ご興味おありの方はぜひ聴いてみられてください。
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協奏曲をピアノ伴奏で協奏曲はソロ+オーケストラが本来の形態のため、ピアノ版の演奏のCDなどは ほぼありません。
こちらは、マリンバ協奏曲(一柳慧作曲)のピアノ編曲版の動画です。わたしがピアノでオーケストラパートを弾いています。よろしければご視聴ください!