あなたはピアノの本番、楽しんでますか?
まずは
もも
と、思いますよね。
たしかにとても大事なことですし、ある面ではいつも心がけておきたいことです。
このブログでも「本番で練習の成果を発揮できるように!」と思っていくつもの記事を書いています。
でも、それと同時にこんなことも言えます。
- いつもと違う演奏
- いつもと違う自分
それは、もっと深く音楽を「楽しむ」こと、そして自分を発見する「ドキドキ」した体験にもつながります。
ただ、お手軽に「楽しもう〜」と思って楽しめるわけでもありません。
- 十分な準備ができていること
- 真剣・全力であること
- 余白があること
が大切です(これについては、この記事の真ん中あたりから説明しています)。
せっかく毎日音楽に親しんで、一生懸命練習して舞台に上がるなら、ぜひこの「楽しみ」も体験したいですよね。
今日は、そんな本番ならではの変化や魅力を楽しむこと、またそのためのポイントについて書いていきます。
もくじ
本番では、なにかが起こる?
本番は「非日常」
変わったことがなにも起こらない本番って、あるのでしょうか?
もも
でも、いつもの自分らしく弾いた上で「なにかが起こる」ことを怖がらなくていいと思います。
家での平常な空気、空間とまったく同じ演奏なんてありえないと思いませんか?
その時、そこにしかない空気から生まれるもの。
それをもっと受け入れてもいいなと思うんです。
「本番でも練習どおりに弾ける」もはじめはいいけど、「本番の演奏に違いが出る」ほうがもっと素敵だなと思う。音楽は生きていて、その場所、響きやそこにいる人、自分も刻一刻変化する中で変わるから。
基本的な軸はぶれないまま、その時その時の変化を受け入れられる敏感さ、柔軟さを持っていたい。— 崔理英 / Rie Sai (@smomopiano) 2017年9月2日
きっとあなたも、舞台だけで体験したいろいろなことが、これまでにあるはずです。
私はいままで、本番でこんなことがありました。
- 曲が語りかけてきたように感じて泣きたくなったこと
- 音楽に対して、すごく熱くなったこと
- お客さんの空気を感じたとたん、曲が違う呼吸をし始めたこと
- 「あれ、今すごくきれいな音が聞こえてきた」と思ったこと(自分が出した音というより、その場の空気や空間から聞こえてくる感じ)
ときにはそれを、「こわい」「嫌だ」と思うこともありました。
ですが「楽しかった」と思えることもあり、せっかくなら楽しみたいなと今は思っています。
なにかが得られる!!
本番が終わったら、急に自分が変わったような気がすることってありませんか?
同じ曲を弾いているのに、急に、ひとつ乗り越えたような。
見える景色が変わったような。
そんな感覚になることがあります。
その日までの緊張の極限状態であったり、本番独特の華やかさと静けさであったり。
そこでただ1人、音楽と見つめ合うことでふだんと違う何かが見つかる・・・そんな体験ができれば素敵です。
マリンバ奏者の吉崎雅夫さんのCDのライナーノートに、子ども時代に演奏されていた思い出についてこんな文章があります。
ステージに上がった時、普段とはまるで違って阿修羅のごとく入れ込んで弾く精神状態には、自分でも不思議に思ったものです。現在でもそうですが、練習ではどうしても解決できなかった部分がステージ上での異常感覚で一瞬に理解できる部分もあって、演奏家として大事な素質をこの時代に得たと思います。(引用:吉川雅夫 Marimba Virtuoso [パリのアメリカ人] ライナーノートより)
幼少期からこんなふうに演奏されていたなんて、すごいと思います。
でももしかしたら、「あ、なんとなく、その感じわかるかも」と思う方もいるかもしれません。
本番では、きっと何かを得られます。得られる人になりたいです。
アンサンブルでも!
ひとりだけの本番ではなく、アンサンブルやコンチェルト、合唱の伴奏などでも、本番ならではの「言葉のないやりとり」が生まれます。
- ふっと現れる、予想のつかないような音や表情に、お互いにとっさに反応したこと
- 相手の心理や反応を感じておもしろくなってきちゃったこと
- いつもと違う「間」や「空間」を感じたこと
何百回練習しても見ることのなかった景色、聴こえることのなかった響きが見つかることがあります。
ただただ「いつもどおり弾く」「この前と同じように弾く」「いつもと同じタイミングで合わせる」ではつまらないなぁ、と思うこの頃です。
ソロでもアンサンブルでも同じで、いつもより相手の音が伝わってきたり、空間を感じてみたり、あ、いま曲にこんなこと感じてるかな?と思ったり、そんな毎回の変化が好きです。
だから、事前にガチガチに決めるような打ち合わせをして毎回の本番でそれをなぞることは好きでない。— 崔理英 / Rie Sai (@smomopiano) 2017年9月2日
最近は、いつも新鮮な演奏をめざしています。
本番の変化を楽しむための3つの条件とは?
では、「楽しむ」ってどういうことなんでしょうか?
「よーし、楽しもう〜!」と思うだけで楽しめるわけではなさそうです。
ある意味、いちばん難しいのでは?と思います。
そこで、楽しむための条件を考えてみました。次の3つです。
- 十分な準備ができていること
- 真剣・全力であること
- 余白があること
十分な準備ができていること
これは前回の記事(本番で力を発揮するために必要なこと〜PDCAサイクルを弾きあい会で実践!〜)でも書きました。
あらゆる準備ができていないと、落ち着くことも、冒険することもできません。
練習という意味だけでなく、1回1回の本番に対して心も体も、しっかりと整えて当日に向かうということ。
これは、もっとも大切なことのひとつです。
真剣・全力であること
「楽しむ」といっても、無責任に自分の楽しさを追いかけるわけではありません。
また、アハハと大笑いする、という楽しみではなく、その中には思慮深さやさまざまな感情がブレンドされている「楽しみ」なのです。
「音楽の楽しみ」に対して、真摯に、全力で向かっていくこと。
それは、演奏するときの醍醐味のひとつではないでしょうか。
余白があること
曲に対して、また自分に対してガチガチに決めて固めてしまっては、本番当日はそれを忠実に再現することを目指すだけになってしまいます。
その日の空気や感情の動き、ピアノの音色、会場の空気、お客さんの息づかい・・・
そして自分自身が演奏中に向かう境地。
その、絶妙に揺れ動く余白を感じられると素敵です。
そのために、練習では100%固めるというより、なにか空白のスペースを残しておくこともあって良いのではと思っています。
ある面では完璧にしておかねばならないこともありますが、ある面ではその余白が、当日化学変化を起こしてくれるのではないでしょうか。
まとめ〜音楽の深い「楽しみ」をめざす〜
この記事では、
- 本番ではなにか変化が生まれる!
- それを受け入れることでなにかが見つかる
- 「楽しみ」を見出すためのポイントは、十分な準備と、真剣さと、余白
について書きました。
ところで、コンクールで弾き終えた生徒さんがこんなメールをくれたことがあります。
「素敵なピアノ、会場だったので、コンクールとはあまり思わずコンサート・リサイタルのように思って弾きました」
これを読んで、コンクールだからと守りに入ることなく、そのとき・その場所のピアノや会場の響きを味わってのびのびと弾いてくれたのかなと思い、とっても嬉しかったです。
これを読んでくださったあなたも、次の本番がすてきな体験になりますように。
では、楽しんで!!
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