こんにちは。崔理英です。
前回、レッスンや練習で問題点を見つけたときの改善ステップ、サイクルについて書きました。
※前回の記事はこちらです
ピアノの練習でうまく弾けない原因は?改善のステップ今日は、その時に必ず関係してくる「ことば」について書きたいと思います。
音楽を感じる時には本当に無心になって弾けることもありますが、具体的に練習している時は「ことば」は不可欠です。
レッスンでの言葉。楽譜に書きこむ言葉。練習しているとき、頭の中に巡ってくる言葉。ひとり言・・・
今日は、その「ことば」を意識して使おう、というお話です。
もくじ
レッスンや練習時の「言葉」の選び方
言葉のつかい方のポイントは・・・
- プラスの言葉を使う
- 具体的な言葉を使う
- 未来へのワクワクしたイメージを!
実践としては、
否定形は肯定形に→そして具体的に→そして理想を描くこと
が大切です。
では順番に。
無意識のうちに否定形ばかり使って練習していませんか?
否定形を使うことに慣れてしまっている?
走らない!間違えない!としょっちゅう言ってしまいがち・・・
演奏に対して、自他ともに、注意点やポイントは山のようにあります。
「~しない」「~してはいけない」「~(悪い状態)~になっているよ」という言葉だけで
おそらく1時間のレッスンは埋めることができます。
現状を把握することはとても大切ですし、本人には気づいていないこともあるので、それを指摘することも大切ではあります。
でも、ここで終わらせてしまっては、良いイメージのないまま練習を重ねることになってしまいます。
実は生徒の方も、否定形に慣れてしまっている
これはレッスンで指導者側が言うだけではなく、生徒さんの方まで
「私の演奏=ミスしてしまった。かたくなってしまった。速くなる」と反省点ばかりを強調してしまうことがよくあります。
真面目な生徒さんほど、「~~~になってしまっている」「~~ができていない」と考える傾向にあるようです。
本人の書き込みを見ても、「走らない」「すべらない」など、やはり否定の表現が多く見られます。
※不思議なことに、
私が「ここ、楽譜はどうなってる?なめらかに弾きたいよね。いまは、○の音が飛び出てしまってるね。このようなタッチで弾いてみようか?」と いくつか言葉をかけたときに
生徒さんは「×飛び出てしまっている」というように、否定的なキーワードの部分だけをピックアップして楽譜にメモしていたりします。
気をつけることを箇条書きでピックアップするような練習の方がやりやすいのかもしれません?
これは、私ももっと工夫して伝えなければ・・・と思ったりします。
否定形より肯定形が良い理由
さて、あらためて、なぜ「肯定形=プラスの言葉」が良いのでしょうか?
「~~しない」という禁止の表現は、注意をひくには効果的ですし、
正直なところ「ペダルをよく聴いてきれいに踏んでね」と伝えるより「いまペダル、にごってるよ」と伝える方がハッキリ伝わる場合もあります。
でも、演奏は
- この音楽はどういう世界やメッセージを持っているのか
- 演奏で、何を伝えたいか
がとても大切なので、マイナスの言葉ばかりでは目標イメージが作りにくくなってしまいます。
具体的で、「こうしよう!」「こう弾こう!」という言葉、イメージが大切なのです。
その後にくる「行動」のためにも。
脳の仕組みでも、マイナスの言葉は否定形など関係なく、「間違える」とか「転ぶ」とか、その単語そのものが脳に刻まれてしまうそうです。
そういう意味でも、良いイメージを頭において演奏したいです。
それに、もっと大切なのは、「ではどうするか?」ですよね。
プラスのことばを使って練習する具体的な方法
具体的にどうすれば良いか、言い換える
具体的なポイントを使い、楽譜に書き込む
レッスンでは、否定形で終わらないようにできる限り気をつけています。
私自身、「すべってるよ」とか「こんな(きれいじゃない)音になってしまっているよ」と言うことはあります(けっこうあります)。
でもできる限り、その直後に、「だからこうしてね」ということを付け加えるようにしています。
そして、生徒さんにもそれを意識してほしいと思っていますので、
別のことばでより具体的に目標として書きかえること。
もしくは、
否定形の後に「走らない。落ち着く、息を吐く」「走らない。○の音をよく聴いてから。リズムを感じて」などと付け加えること
と、すすめています。
先ほどのペダルの例なら、「にごらない!」と書くより、
具体的なペダルのマークを書いて、
「きれいに」「この和音を聴いてふみかえる」「〜〜の速さ・浅さでふみかえる」
などと書いた方がいいですね。
楽譜は、毎日目にするものですから・・・
的確な解決策のためには、「原因」がわかることが大切
これについては、前回の記事をご覧ください。
その結果どのような演奏になるか、どう弾きたいか、まで言葉にする!
「すべってるよ。〇指の関節を使ってこの音をくっきり弾いてね(具体的に)」
から、さらにもう一歩、
「ハッキリ弾くと、この音型のキラキラした魅力が伝わるよ(理想のイメージ)」
「こういう世界を感じて、どんな音が出したい?」
と、良いイメージに変換できるよう心がけていますし、
書き込みはプラスの言葉(もしくは、[否定→プラス]のセット)ばかりになるように心がけています。
さらには・・・「深く沈むように」「朝焼けの光のように」「なぜ!?と訴える気持ち」など
とイメージを書いていくのも良いです。
最後に・・・こんなアイディアはいかがでしょうか
以前ある人に相談したことがあります。
「楽譜が注意点ばかりでいっぱいになってしまう。
現実的なことを書いて注目することは必要だけど
でももっと理想の演奏を思い描くようにしたい。どうしたら良いでしょうね?」
するとその人はこのようなアドバイスをくださいました。
「本番前には新しい楽譜にしたらどう?」
こういうことです。
・・・練習段階は、いろいろな必要な注意点や現実的な書き込みも多い。
それらを消化していき、楽譜が何部も注意事項にいっぱいになったとしたら・・・
本番前の真っ白な楽譜には、『こんなふうに弾きたい』『こんなことを思い浮かべて』という
未来へのワクワク感ばかりを書いて、直前にはそれを見ると良いのでは」と。
とても素敵なアイディアだと思いました。
(ちなみにこの方は、音楽とは別のお仕事をされている方です)
新しい楽譜でなくても、ノートでもOKです!
演奏会前には、白いノートや、手帳の空白ページに、たくさんの言葉を書きます。
「ことば」の力、影響力はすごいのです。