この記事は、LINE@読者さまからいただいたご質問がきっかけで書いています。
ご質問内容はこちら。
小柄な私が 力まかせでなく 、
先生の教えてくださったように もちろんふぬけな音でなく
脱力はしながらも、 オクターブの問題などクリアしつつ
素敵に仕上げていくには どうしたら良いでしょう?
(ショパンのポロネーズ5番を弾かれている大人の方より)
このように、体は大きくないけどスケールが大きな曲を弾きたい・・・というのは、わたしもよく悩むことです。
もも
うさぎ先輩
もも
さいりえ
西洋人の男性ピアニストは体が大きくて手も分厚い人がたくさんいますよね。
わたしは大柄ではないし、指は長いけれどてのひらは薄めで、腕も細い。
しかも、20代前半のころに比べたら、明らかに体力も落ちています。
リストやプロコフィエフ、ラフマニノフなどの大きな曲を弾くには限界を感じることもありますし、「わたしには音が合わないからやめておこうかな」とあきらめることもありました。
でも、物理的な大音量を出せなくても、できることはたくさんあります!
それは、次のようなことです。
- 音楽の理想はどこまでも広く
- 内面の充実を求める
- どの音にも情感を
- 音のキレやリズムの生命感など、別の面を求める
- 絶対的音量ではなく、相対的な演奏による満足感
この記事では、手が小さい、体が小さいけれど、大きな曲にチャレンジしたい!というあなたへ、大事なことを書いていきます。
力んで頑張っちゃうよりも、曲の内面にじっくり向き合って、あなたの演奏を見つけられますように!
この記事では、「大きな音や豊かな音を出す奏法・方法」などは書いていません。それ以外の考え方に焦点を当てて書いています。
もくじ
まず、音楽の理想は広く大きなイメージを持とう!
どんな音が出せる、出せないにかかわらず、曲の世界に最大限近づきましょう。
スケールの大きな世界観をもつ曲なら、あなたの中の世界はどこまでも広がりを感じ、作ってください。
その想像力が、演奏に奥行きをもたらしてくれるはずです(魔法ではないですよ。想像力によって練習の内容が変わるからです)。
内面の充実を求める
もも
もも
さいりえ
音の強さよりも、音楽の濃さや充実度を求めていきましょう。
音楽は、強さ競争ではありません。
もし、音量計測器のようなものでピアノの音量を測ったとして、その数値が120と80だったとしても、
80の演奏のほうが音楽的に充実していれば、そのほうがずっと良い演奏です。
作曲家、曲と向き合い、この曲はどんな音楽なのか?どんな音なのか?とじっくりやっていきましょう。
どの音にも情感を
自分には迫力がたりない・・・スケールが小さい・・・と思う人ほど、ひとつひとつの音を弾き飛ばしていたり、サラサラ弾いてしまっていたりします。
もう一度、ひとつひとつの音に向き合い、その音の持っている意味をかみしめ、音に表してみてください。
バーン!と勢いよく出るよりも、その場所の世界観や調性感を含んだ音で深く入ると、印象が大きく変わります
すべての音に対して、向き合い、どんな短い音であっても、響きのある、歌う音で発音します。
音楽を愛するあなたならできるはず!
(これは作曲家にもよります。過度に情感をこめるより、別のものを必要としている曲もたくさんあります)
音のキレや伸び、リズムの生命感など、別の面を求める
ボリュームや迫力に限界があるとしても、ほかのことで演奏の力強さや緊張感を表現することは可能です。
わたしも曲によって、
さいりえ
と思うことがあります。
体の構え方や腕のおろし方、指の使い方でできる限り厚みのある音をめざしますが、どうしても物理的な限界はあります。
さいりえ
でもそんなときは、
- 厚みは80%だけど、伸びる音で
- 音量は90%だけど、リズムのキレは150%!
- 和音のバランスを美しく磨いて、空間に響いていくひびきを
など、別の形で目的を達成できるように努めます。
さいりえ
絶対的演奏ではなく、相対的な演奏による満足感を
演奏する目的や大事なことって、なんでしょうか?
それは「各音の正解を見つけること」ではなくて、
- 一瞬一瞬、そして曲全体がどのような世界を描き出せるか
- (自分を含め)聴く人に何を感じてもらえるか
だと思います。
迫力のある演奏は「すごい」と思いますが、
「いい曲だなぁ」「音楽っていいなぁ」と思えるには、必ずしも迫力が必要なわけではありません。
(そもそも、迫力を出すために、めちゃくちゃ大きな音が必要なわけでもありません)
どんなにスケールが大きい曲でも、曲の構成や和声をひも解いて見てみれば、音量や迫力以外のちがうアプローチも見つかるのではないでしょうか。
選曲はだいじ
さいごに、選曲について。
いろんな観点で曲を選ぶと思いますが、あまりにも体に無理のある曲はやめておいたほうがいいし、
あなたの体や、持っている音に合った曲を選ぶということも大事です。
ただ、あこがれの曲や大好きな作曲家の曲など、ちょっと自分にはむずかしいかもしれないけど、演奏したい!という強い思いがあれば、チャレンジしてみたいですよね。
- むりなく、音楽に集中できる曲
- 体に負担のない曲
- チャレンジしてみたい大好きな曲
- 演奏力アップのために経験したい曲
選曲はとても重要なので、いろいろなポイントを加味して選んでみてくださいね。
コンクールやレッスンの選曲ポイント〜4つのケース別考えかた〜まとめと、わたしの回答
この記事では、小柄な方や手が小さい方がスケールの大きな曲にチャレンジするには?というポイントを書きました。
冒頭でご紹介した質問に、わたしがお送りした回答もご紹介しておきます!
男性のような力強さやスケール感は難しいかもしれませんが、書かれているように
・伸びる音
・どの音もショパンらしく情感がこもっていること
・音の遠近感(そんなに気張らなくて良い音は、和声感・響き重視で、頑張らない。でも響きは豊かに)
※響き重視ということは、発音の迫力はそんなに必要ないということです。などの観点で取り組んで行かれると良いのではと思います。この曲はとてもかっこよいですが、同時に深い情緒がありますので、そちらに焦点を当てていき、要所要所でキリッとポロネーズのリズムを締める。(部分ごとのアドバイスは省略)
その思いが とても鮮明に蘇ってきました。そうです、そうです!!
雄々しく 迫力あることに惹かれたわけでなくりえさんが書かれた「.情感」
言葉にできない もどかしい苦悩、うちにこもる怒り、哀切、幼い頃の懐かしい思い出…。あまりの美しさに…。そうですね!
その「情感」を込めた「響き」を大切にしていきます。
ショパンの曲は 流れも その響きを感じた弾き方をすると自然に輝くように 作られていますね。ペダルや それ以外にたくさん技術を上げる練習方法まで 書いていただき心から感謝!!です。