ピアノの楽譜を譜読みするとき。
その曲をはじめてのレッスンで弾くとき。
いろいろなことが気になると思いますが、そのうちの大切なひとつが「指づかい」(指番号/運指)。
そんな指づかいの決め方の3つのポイントをご紹介します。
もくじ
指づかい(運指)はこんなに重要
指づかいは「手段」であって、目的ではありません(目的は「音楽そのもの」ですよね)。
レッスンで「ここは3で、それから1、2・・・」みたいに指づかいの話が続くと、つまらなくないだろうかと思うこともあるのですが、素敵な表現を目指すためには、実はとっても重要なのです。
実際に、どのくらい変わるのでしょうか?
良い指づかいを選べると、どうなるか?
- 指運びが自然になり、弾きやすくなる
- きれいな音を出しやすくなる
- 表現したい音・表情が出やすくなる
- 手が安定しやすくなる
- 理由があってその指づかいを選んだ、というプロセスがある場合、忘れにくく暗譜がしやすい
逆に、不合理な指づかい、自分に合わない指づかいで弾いてしまうと?
- 正確に弾けない
- 音に不自然なムラができてしまう
- 手の動きに無駄や意味のないことが入ってきてしまう
- 表現したいような表情や音色が出せない、もしくは出しにくい
- (もし、良い音を出せたとしても)必要以上の苦労をしてしまう
そんなわけで、レッスンでは指づかいについても、ときに時間をとってしっかりやっています。
では、実際にどのようなポイントで指づかいを決めていけばよいでしょうか。
ポイント1:音楽的な演奏になるか(音色・表情)
どの指を使うか、どの順番に使うかで、音色や表情はガラッと変わります。
- アーティキュレーションやフレーズ感(音楽の文章)も変わります。
- リズム感も変わります。
- 指運びや手の緊張度が変わると、音色も変わります。
普通ならなめらかに弾ける指を選ぶけれど、あえて作曲家が迫力のある音を求めて[1−1]にするなど、特別な運指を求めていることもあります。
音楽的な、その曲(部分)にふさわしい表現、イメージしたような表現ができるかどうか、が大きなポイントです。
ポイント2:無駄が少なく、合理的かどうか
たとえば、5の指(小指)だけで左右に移動して 連続したきれいな音を出すのはけっこう難しいです。
そのため2つの違う音が並んでいたら、他の指を順番に使った方がきれいに弾きやすいですね。
でも、他のことに意識がいっているせいか、ついつい弾きにくい指づかいを選んでしまっていることがあります。
(ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番 Op.27-2『月光』 第3楽章より)
例:この場合、赤矢印の部分は楽譜のとおり [1と4] が良いのですが、ついなんとなく[1と5]で弾いている・・・というケースがあります。
そうなると、前の音と同じ5の指で跳躍しながら連続して弾かなければならないので、難しくなってしまいます。
その場合はすぐに、「自然な指づかい」「合理的な指づかい」を選びなおします。
ただ、同じようなケースでも、やむをえず難しい指づかいしか選べない場合(届かない、他の指で他の音を押さえている、など)もあります。
その場合は、その条件で最大限美しく弾けるようにいろいろと工夫します。
ポイント3:自分の手・指に合う指づかいを選ぶ
同じ箇所であっても手の形ややわらかさなどによって、こちらの指使いのほうが弾きやすい、弾きにくい、ということがあります。
たとえばオクターブを連続して弾く場合、楽譜に[4−5−4−5][3−4−5−5−]と書いてあることはよくあります。
手が大きければ、それでなめらかに弾きやすくなります(もちろん指づかいだけでなく、それに応じた弾き方やタッチが必要です)。
でも、それではギリギリで指が届きにくい、という人も多くおられます。
(シューマン:クライスレリアーナ Op.16 第2曲より)
[3]の指でオクターブをとるのは、人によってはなかなか大変ですね。 そもそも物理的に届かない人もいます。その場合、無理に手をギュッと開いて硬い音が鳴るよりも、自分に合った指づかいで、「美しく聴こえる」ように弾くほうが大切です。
このように、理由があれば楽譜どおりの指づかいでない方がよいこともよくあります。
私はレッスンの中で指づかいも重要視しているので、相談しながら、どんどん書き換えていくこともあります。
とくに、バッハの3声を初めて弾く・・・という生徒さんのレッスンではエンエンと指づかい、指運びのことを一緒にやっていたりします。
どちらにしても、敏感な耳や練習する努力も必要になりますね!
まとめ:ポイントが確認できれば【後編】で実践!
ここまで、指づかいの重要性や、決めるときのポイントについて書きました。
後編は、実際に楽譜・ピアノに向かって練習するときに必要なこと、大切なことについて書いています。

ぜひこちらもお読みください。